<<最初へ <前へ
一覧に戻る 次へ> 最後へ>>
「馬鹿じゃねぇの?」
隣から呆れた様子で言い渡された言葉に私はしばし呆然とする。おかしい、私は今付き合って三ヶ月というラブラブな相手に愛を囁き「生まれ変わってもあなたと一緒にいたいなぁ」といじらしい言葉を告げたはずなのに。
怒るというより悲しいというより、驚きすぎて思考停止の状態で立ち止まってしまった私に、二・三歩進んで立ち止まった彼はまだ呆れている顔で振り返った。
「輪廻云々前世がどうの来世はこうでとかよく聞くけど、お前そんなの本気で信じてんのかよ?」
現実主義なのは知っていたしそんな所が好きなのだが、生まれ変わり云々に着目するのではなく「それだけあなたのことが好きなの、一緒にいたいの」という想いを受け取って欲しいところである。私は肩を落として何と説明しようかと目をつぶって考え出した。
その時、不意に手を取られる。目を開けて顔を上げれば、にっと笑った彼と目が合った。
「そんな科学で証明されない概念に任せないでも、とりあえず今隣にいる俺と手でもつないでおけば、好きなのも一緒にいたいのも伝わんだろ」
ああもう、この野郎。分かってたんなら理屈より先にそれを伝えろ。頭が腹立ちを訴えるが、私の両頬は一瞬にして緩んでしまった。これはもう仕方ない。馬鹿ップル真っ盛りの私の心は都合よく「分かってくれてた」ことだけ抜き出して満たしてしまうのだから。
緩く握られていた手を強めに握り返す。これで伝わればいい。今隣にいるあなたがこんなにんも好きなのだと。こんなにも近くにいたいのだと。
この先彼が手をつなぐのを嫌がったら言ってやろう。「生まれ変わったりしないんだから今手をつないでよ」って。
〜あとがき〜
departure(お題bot) さん(https://twitter.com/dpt_title_bot)のお題、
「死んだって生まれかわったりしないから、ねえ手でもつなごうか」より。
ラブラブな感じのが書きたいなぁと思ったので書いてみました。
多分この彼女は彼氏に現実的な回答貰うたびに上手いこと変換して彼氏に構って貰いに行くタイプの子だと思われます。したたか。
作成 : 2015/01/22
掲載 : 2015/02/21
<<最初へ <前へ
一覧に戻る 次へ> 最後へ>>