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<2012年秋企画 風吹く宮バトルロイヤル> 

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 風吹く宮は管理人執務室、宮の主はまたも唐突な言葉を口にする。

 

「今年の秋企画はバトルものにするか」

 

 提案、というよりも決定を匂わせる口振りに、書類の枚数を数えていた謝は特に驚く様子を見せずに主に目を向けた。

 

「去年の煽りですか?」

 

 この宮では年中思いつくと祭りが開催されるのだが、特に毎年の秋の祭りは大がかりに進められる。一昨年はハロウィンの名を借りた鬼ごっこ。昨年は住民を2組に分けた運動会だ。

 

 残念ながら昨年はこの宮の名物ともいえる強風の襲来により途中で終了してしまったのだが、最後に行ったリレーの、その後、最終走者であったふたりの住民が喧嘩を始めてしまったのだ。“喧嘩”というと物騒な雰囲気を醸すが、そこは風吹く宮。住民たちは最後の余興と大盛り上がりを見せていた。

 

 その時謝もまた『来年は武闘会でもいいのでは』と思っていた。が、まさか実行することになろうとは。

 

「うん、んでさ、こういうの考えてるんだわ」

 

 主は手元に置いていた紙を謝に差し出す。謝は書類をチェストの上に置き、主に近づきそれを受け取った。

 

「マスター、もう少し丁寧にお願いします。読めますが」

「やかましい。読めるなら黙ってお読み」

 

 紙を埋めるのは今回の企画の草案らしく、図や文字が乱雑に踊っている。あまりに乱雑すぎて慣れている謝か本人くらいにしか読めないだろう。やれやれと肩を竦めてから、謝は改めて紙に目を通してく。

 

「……なかなか大がかりな舞台になりそうですね。メインステージは宮の北にある丘陵にでも作って、待機スペースは宮との間、といったところでしょうか?」

「その辺りは任せるよ。ただし、これ。この部分は絶対安全にね。ラリーにもよく伝えておいてな」

「承りました。それでは早速取りかかります」

 

 一礼をし、謝は草案の紙と先ほど受け取った書類を手に扉へと向かう。そして出ていくその一瞬前、一度振り向いた。

 

「こちらは私が行いますので、マスターは新住人の皆様たちの移転書をなるべく早めに作成しておいてください。以前のトーキ様たちの時のように他の住民の方にご迷惑をおかけするわけには参りませんよ」

 

 ぴしゃりと言いつけられ、主は目を逸らしつつも返事をする。だってあの時は宮の改装で引っ越しが忙しかったんだもん、という言い訳は心の奥にしまい落とした。

 

 







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