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<2012年秋企画 風吹く宮バトルロイヤル> |
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残ったエイラと凌統が相対する中、清風がリーゼロッテを素通りしてアニカへと向かう。 「ねぇガルシア、さっきのまた出来ないの?」 ユーリキア戦と同様のことを期待してみるが、肩に乗った猫は完全にだれてしまっていた。 「えー……無理。俺もう十分働いた。あとは頑張って」 やる気はすでにないらしく、顔を上げないまま拒否を示す。これはもう動かすことに時間をかけても無駄だと判断したアニカはそれ以上はガルシアに意識を向けず、駆けてくる清風に銃口を向けた。彼とナイフで相対しようとは思わない。ユーリキアの場合は近付かれすぎてしまったので諦めたが、剣を主体で名を馳せる人物相手ではアニカには不利すぎる。 銃口がしっかりと相手を捉えると、アニカはすぐに引き金を引こうとした。だが、眼前で起こった光景に驚いて動きを止めてしまう。 突然、明月が宙に浮き上がり上下が反転した状態で背中から清風の背中にぶつかったのだ。これにはさしもの清風も対応出来ず、そのまま前に倒れ込んでしまう。そうして最後に立っているのは、縄に巻き付かれたままのリーゼロッテだった。 「あんまり舐めないでくださる? 弟ほどではないとはいえ、あたしだって身体強化は使えるのよ」 とは言ってもかなり力業であったらしく、投げた本人も息が上がっている。しかも足がかすかに震えているところを見るに、恐らく最後の魔力を振り絞っての攻撃だったのだろう。 「へぇ、カッコいいわねリーゼ」 この一瞬を無駄にするまい。アニカは仕事中もっとも集中している時と同じ目をし、再度狙いを定め直すとまだ立てずにいた明月と清風に一斉射撃を行った。銃弾の雨の中、ふたりのバルーンはどんどんと赤くなり、ようやく清風が立ち上がるが前に出ようとした瞬間にそれは破裂してしまう。そして、同じく立ち上がろうとした明月も結局バルーンが染まりきってしまい、あっけなくそこから姿を消した。 こうして明月軍が退場すると、場に残ったのはアニカ、ガルシア、リーゼロッテ、そして凌統がいなくなったためフリーになったエイラの4人。戦う気のないガルシアはカウント出来ず、魔力も体力も、もはや立っているだけで精一杯のリーゼロッテもその点では同じ。 つまり、大将騎同士の一騎討ちということだ。 「やっぱり遠距離武器は強いねアニカさん。でも、あたしだって遠距離行けるんだから」 すでに何かをスケッチブックに描いているのか、エイラはページの間に指を差し込み僅かに開き、いつでも攻撃に移れるように準備をする。アニカもまた、銃口を彼女に向けたままタイミングを計り続けた。 離れた場所で戦っていたため、エイラがいる場所とアニカがいる場所はそれなりに距離がある。しかし、どちらの攻撃範囲にもお互いは入っているため、攻撃を仕掛けようと思えばいつでも仕掛けられるのだ。 互いにタイミングを狙っていると、突然ガルシアが起きあがり近くの木まで見事な跳躍を見せる。巻き込まれると危ないと判断したのか、と思ったアニカだが、それが自身の思っていた以上にこの場に留まることが「危うい」ためだと遅れて理解する。 「なっ」 ガルシアが離れた直後、いつの間にか地面から現れていた草に足を取られて転んでしまう。 「いよっし成功! アニカさん覚悟ぉ!」 どうやらエイラが召喚したものらしい。飛び上がって喜ぶと、先ほどまで指を挟んでいたページとは別のページを開いてアニカの方へと向けた。その途端に一気に飛び出してきたのは何十もある銀色の矢だ。それらはナイフで草を切っていたアニカに一斉に向かってくる。 だが 「えっ!?」 途上、何かによってそれを妨げられた。この場で唯一大将騎以外に残っているやる気のある一般騎――リーゼロッテによって。 魔法で何かしたわけではない。体術でどうにかしたわけではない。ただ単に、その身を盾にして倒れるように矢の前に出てきただけだった。 だがそれだけで十分。 大量の矢を受けリーゼロッテは退場し、矢も僅かに残る。だが、彼女の陰から走り寄ってきていたアニカが手にしたナイフによって大半は弾き飛ばされ、いくらか当たった矢は彼女のバルーンを赤く染めるも撃退にまでは至らない。 「ちょちょちょ、マジ!? うわああ、き、筋肉ダンディ……」 「遅いわよエイラ」 完全に勝ったと思って油断していたエイラは慌ててお得意の召喚をしようとスケッチブックをめくり出す。だが、それより早く接近され、顔をひきつらせると同時にナイフで切りつけられてしまった。 近接戦闘に慣れた者ならともかく、エイラは中距離からの特殊技能勝負がメイン。この距離で相手取られてしまったら抗いようがない。 5回ナイフがエイラの前を行き来すると、バルーンは真っ赤に染まり上がり、ついに、その姿は掻き消える。 一瞬の沈黙。次の瞬間、割らんばかりの大音量がメインステージに流された。 『企画終ーーーーー了ぉぉぉう!! 風吹く宮バトルロイヤル、優勝したはアニカ軍だぁぁ!! 全員拍手ぅぅぅぅぅ!!』 テンションの上がりきったクリフの声が映像と共に流れると、その背後で大いに盛り上がっている住民たちの歓声や拍手が同じく映像と共に空中に映し出される。 それを見上げたアニカは少しの間惚けてから、改めて自身の勝利を認識した。そうすると、自然と笑みがこぼれ、思わずガッツポーズを取ってしまう。 「結構熱血だね君。まあ終わったんなら俺はもういいけど。ところで途中で助けてあげたから海苔ちょうだい」 再度ガルシアが肩に乗ってくる。分かったわよ、と笑みを向けたところで、アニカたちもまた待機会場に戻された。会場では早くも宴会の準備が進められ、アシスタンツがあちこちを走り回っている。 同一世界の者たちに迎えられたアニカはそれに対応しつつ周囲を見回し、あちこちで起こっている企画中の「落とし前」を視界に入れてまた笑った。随分と騒がしく、愉快な所であるようだ、と。 |
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風吹く宮(http://kazezukumiya.kagechiyo.net/)