それは昔々の物語。ある所に、竹取の翁という人がおりました。翁はとても正直で優しい人でしたが、日々を貧しく過ごしておりました。だから、いつも竹山に入っては竹を取り、色々な物を作って売っています。
そんなある日、いつも通り竹山に入った翁の目に、金色に光る竹が映りました。
『何であろうか……?』
不思議がりながら翁はその竹を切ってみました。すると、中から小さく愛らしい女の子が出てきました。翁はその女の子を家につれて帰り、『かぐや姫』と名付け、嫗と共に大切に育てました。
やがて大きくなったかぐや姫はそれはそれは美しい娘になりました。その美しさはあちらこちらに知れ渡り、彼女を一目見ようとやってくる殿方は数知れません。
しかし、彼らを見て哀れさを感じる翁、嫗の心は誰も知りません。彼らが分かっていないからです。世に名高き姫君の実体を――。