<2012年秋企画 風吹く宮バトルロイヤル> |
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『続けて概要をご説明します。こちらをご覧ください』 スクリーンに映し出される内容が切り替わる。 画面中央にデフォルメされた黒い人型が3人現れた。彼らの上には『大将騎』という文字とA、B、Cの文字が書かれている。さらに画面の端の輪で囲まれた部分には『一般騎』と書かれた複数の白い人型が現れる。 『今回はまず3人の“大将騎”を決め、それ以外は“一般騎”として条件が満たされるまでこちらの会場にて待機していただきます。そして、大将騎となった方はメインステージに入っていただき、敵の大将騎の撃破に向かいます』 メインステージに人型が投下された。人型はメインステージを縦横無尽に駆け回る。 『ご自身のみで戦うのもありですが、仲間を増やして効率的に戦うことが今回のメインとなります。その仲間を増やす方法、というのがこちら』 メインステージ内を駆け回っていた人型の1体――大将騎Aが突然止まった。そうかと思えば、画面に一枚のカードが表示される。例えだろうか、内容は今朝礼台の上で説明を行っている風吹く宮管理代行人・風謝の名前が書かれていた。 『会場の至る所に、全ての住民の方々の名前が書かれたカードがばらまかれています。大将騎がこのカードを獲得し、そして取得を宣言した時点でそのカードに書かれていた方、つまり一般騎はその大将騎の配下となります』 画面の中の大将騎Aに「カードを取る」という吹き出しがつく。すると、突然謝をデフォルメした人型がその隣に現れた。 『なお状況に応じた軍表はこちらに別モニターにて随時更新していきます。現在は、私が大将騎Aの配下として追加されました』 示されたのはまた別のモニターであり、そこには大将騎A、B、Cの名前とその配下一覧が表になっている。そして確かに、謝の名前は大将騎Aの下に書かれていた。 『このように仲間を増やし、敵大将騎がいなくなった時点で、最後に残った大将騎が勝者となります』 ようは仲間を増やしての殲滅戦、ということだろうか。龍真や馬超たちがそんなことを小声で話し出すと、聞こえていた咲也たちは「ちゃんばらごっこを思い出す」と笑った。 『なお、今回は特別なルールが複数存在します。まず代表的なひとつめはこちら』 画面に再度注目を集めると、画面の中では大将騎Aと謝VS大将騎Bの戦闘がはじまっていた。すると、突然デフォルメ謝に吹き出しが追加される。そしてその内容に、数人が顔を引きつらせ、数人が目を輝かせた。 「大将騎Aを裏切って大将騎Bにつきます」 吹き出しが消えると、デフォルメ謝は大将騎B側に反転し、大将騎Aを攻撃し始める。軍表のモニターには謝の名前が大将騎Bの下に移動していた。 『特別ルールその1。“裏切りシステム”。一般騎の方は、裏切る、寝返る、誰々に味方する、などの宣言をした時点でそちらに所属を移すことが出来ます。ただし、裏切りは相手大将騎が半径3メートル以内にいる時に限ります。また、仲間同士での攻撃は不可能となりますが、裏切った段階で元仲間への攻撃は可能となります』 説明を聞きながら、「人間関係に傷がつきそうだ」と常識的な思考を巡らせたトーキやミヤコ、ガーリッドたちは苦笑を浮かべる。 『続きまして、特別ルールその2。“投降システム”。大将騎は別の大将騎に降ることが出来ます。ただし、一度大将騎を降りた方は一般騎となり、二度と大将騎にはなれません。また、企画の円滑な運営のため、開始から1時間以内でかつ大将騎が3騎しかいない場合はこのシステムは機能いたしません』 画面の中で大将騎Aが大将騎Cに降ろうとするが×マークが出てきてしまった。 『では次に大将騎が増える条件ですが、これは2つあり、このうちのひとつは特別ルールその3が適用されます。その名も、“下克上システム”』 不穏な言葉に君主である孫権は苦い顔をし、それとは離れた場所に座っている明月は少し興味の出た顔をする。 『こちらは、一般騎として登録されている方々が一定数の敵を撃破した場合に適用されます。なお必要数は秘密とさせていただきます』 謝が口元に指を持っていくと、その背後のスクリーンではデフォルメ謝が「下克上です」の吹き出しを隣に置き、新たな勢力として軍表に名を連ねた。 『この場合の禁止事項は、それまで所属していた大将騎の軍は10分間攻撃対象から外れます。攻撃を行ってもそれは無効とされます』 デフォルメ謝が大将騎Bに攻撃をしているがその度に「0」が飛び回る。 『そして大将騎が増えるもうひとつの方法は、所属していた大将騎が負けた時となります。この時点で先に申し上げました一定数の条件をクリアし、かつバルーンの耐久度が半分以上である方が大将騎となります。なお、バルーンの耐久度が半分を切っている方はこの時に同時に脱落。撃端数が一定数を超えておらず、バルーンの耐久度が半分以上残っている場合はまたこの会場で待機となります』 待機住民はこちらに表示されます、と、軍表の横にもうひとつのスクリーンが現れる。それを見上げて、狂濤は四角い輪郭を丸く太い指で撫でた。 「なるほどねぇ。仮がついてたのは、取捨選択を大将騎が出来るからってことだね」 拾うも拾わぬも自由であるなら、最後まで拾われない者も出てくるだろうと、そういうことだ。 |
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