<2012年秋企画 風吹く宮バトルロイヤル> |
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先ほどよりも威力が強められたそれに、しばらくの間こそ持ちこたえたシールドは音を立てて砕けてしまう。当初よりは大幅に削られた炎は、しかし消えることなく戦えぬ者たちを襲い来た。 その時だ。彼らの前に大柄の姿がいくつも現れて炎を防いだ。その救世主を確認した途端知る者は笑い呆れ驚き、知らぬ者は呆けてしまう。彼らの前に5人ほど現れたのは、爆発しそうなほどの筋肉を見せびらかすようなポーズをとっているヒゲ面で額にカールした前髪が一房だけ残っているハゲ頭の半裸のオジサマだ。彼らは火を防ぎきるとぽんと音を立てて消えてしまった。 「じゃっじゃじゃーん。エイラちゃんとっおじょーう!」 その代わりにハイテンションな名乗りをあげたのは薄いピンクから濃い赤にグラデーションがかった髪をした、うすいピンク色の双眸の少女――エイラ・レーンだ。手にされているのは分厚いスケッチブックとペンという、この場で見れば異色な物である。 「エイラ!」 旅の仲間であるエイラの登場にケイティはほっとした様子で表情を緩めた。エイラはそのケイティににっと笑いかけてからスケッチブックの上でペンを躍らせる。そうすると、今度は盾が現れ襲ってきていたストーンバットたちの攻撃を防いだ。 「あ、あの、彼女は? それとさっきのお髭の方々は……?」 レギナルトが和俊に向かって問いかけると、現れた面々にほっとした様子を見せていた和俊はにこりと笑う。 「あの赤髪の子はエイラ・レーン。魔術絵師っていう職業についてる子でね、描いたものが現実に出てくるんだって。さっきのは筋肉ダンディっていう、エイラのお得意な召喚。――後ろの人たちも説明する? 一番後ろの人は噂レベルしか知らないけど」 和俊が示したのは早速ガンガン戦闘に参加しているエイラの後ろにいた人物たちだ。エイラを除き一番前にいたのは金糸の長髪と澄んだ青い目をした美しい女性で、手には弓が持たれている。その隣にいるのは右目に眼帯をした中年の男性。この状況を楽しむように笑っているその手には抜き放った剣が握られている。その後ろにいるのはレギナルトの見慣れた姿だ。金の髪と青の目は最初の女性と同じだが、纏う雰囲気は凛とした厳しいもので、手にはレギナルトも所持しているサブマシンガンが握られていた。その横には大柄で傷だらけの漢装の男性がいる。手にしているのは同じく抜き放たれた剣だ。さらに後ろには、眼帯の男性同様ひどく楽しげな表情を浮かべている青灰色の髪と目をした青年。腰に剣は指しているが抜く様子はない。 「前から順番に行くよ。マリーニア・ブロウさん。あそこの顔に傷がある人いるでしょ? ガーリッドさん。あの人と同じ世界の人で、弓系屈指のハンターさん。その隣は同じ世界のレイギア・ブルースペルさん。大人気ないから相手する時は気をつけてね。その後ろは僕より分かるね?」 「はい。アニカ・ハインツマンさんで、俺らの世界の英雄っす。銃撃戦も接近戦もめちゃ強っすよ!」 飼い主を前にした犬のようなはしゃぎぶりを見せるレギナルトに一度笑ってから、和俊はふと自分の敬語が抜けてしまっていることに気がつく。だが、今更訂正する気にはならなかったのでそのまま説明を続けた。どうやらレギナルトも気にしていないようだからいいだろう。 「その横にいるのは周泰さん。字は幼平さんね。うちの軍では龍真さんと馬超さんが同じ世界の人。仕える国は違うけど。で、最後の人は僕もよく分からないや。確か……」 「ジーン・T・アップルヤードさんです。あーと、悪い人じゃないんですけど、気をつけてください。はい」 悪い人じゃないのに気をつけろ、というアルバの忠告にレギナルトは不思議そうな顔をするが、視線を逸らして困ったように笑う彼女を見て何か事情がありそうだと深くは追求せずに素直に是を唱える。 「まあ、何にしろアイテムを十分に生かせたようでよかったですね。これだけのメンバーが揃ったならきっと勝てますよ」 安堵した様子で笑うハイネルに、声が聞こえていた面々は同じような表情をして頷いた。その彼らの安堵通り、周囲ではそれまで以上の攻勢で敵軍が駆逐され始めている。 |
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