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<2012年秋企画 風吹く宮バトルロイヤル> 

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 召喚された途端自身に科せられた命令を、呼び出された最後の参加者の内の1人――フェランドはふむと顎に手を当て笑う。

 

「ふむ、『強力な魔法を放て』、か。ちょうどいい、せっかく危険がないのだ。新しい魔法でも試してみるとするか。諸君、これから私は3つほど新しい魔法を放たせてもらう。それが終わったら満足なので、いくらでも攻撃は受けさせていただこう」

 

 朗々と楽しげに宣言すると同時に、フェランドは腕を払って何かの呪文を唱える。周囲に魔力が浸透したことに気付いたのはメーベルをはじめとした魔力を持つ者たちだ。しかしそれが“何か”、と気付けた者はいない。すると答えは当の本人から返ってきた。

 

「今この周囲に結界を張らせてもらった。これは外から入る気をなくし、中から出る気をなくさせるものだ。いいかね、この理論は周囲に魔力を流すことから始まるのだが、これには反発の理論が組まれているのだ。魔力が触れると精神に干渉して――」

 

 突然状況を説明し始めるフェランドに、場違いに目を輝かせるのは彼に憧れるメーベル。騎士試験の終わり直前、帰り道を同じような魔法で塞がれたため大変な苦労をしたことを思い出して苦い顔をしたのはダニエルだった。そして、その他の面々は総じて引きつった顔をする。歴戦の騎士たちでも、伝説を冠するハンターたちでも、向こう見ずなところがある若者たちでも、魔法という分野において天つ才を遺憾なく発揮するこのフェランド・ダヴィアという男の前では蟻も同然だ。

 

 だが、知識に秀でているだけに彼は体力がまるでない。

 

 それを理解している面々は一斉にフェランドに向けて攻撃を仕掛けた。だが、詠唱を始めた姿は陽炎のようにそこから消え失せる。そしてその姿は、また別の木の上に現れた。その彼の隣にいるのは、敵として現れるフェランドのパートナーとするにはあまりに最悪の人物――ネブリナだ。

 

「おほほほほ、逃げるだけでしたらアタクシ大得意なんですよぉ。このまま大将さんをお連れしてしばらく逃げ続けさせていただきますねぇ」

 

 言い終わるか否かの絶妙なタイミングで3つの剣撃がネブリナたちが立っていた枝を切り落とす。しかし、やはりそれは当たることなくフェランドはネブリナと共に別の木の上に移ってしまった。

 

「くそ、飛翔剣でも間に合わないのか」

「信じられない、しかもあの人魔法の詠唱止めてないし」

「文句を言っていないで次を放ちますよ」

 

 剣撃を放ったのはダニエル、リリト、アデラの騎士院生の者たちだった。ライナスとダンカンは呼び出した軍の一員であるため、すでに動作は違う。とにかくガードしろ。和俊から言われたその一言を守るための行動に出ていた。

 

 フェランドの攻撃は無差別。たとえ呼び出した側であっても別軍であるレギナルト軍もまたダメージを負うのだ。それが分かっている者、もしくは分かった者は、レギナルト軍は今フェランドたちに退場されるわけに行かないのでガードに専念。その他の軍はガードに専念する者とフェランドたちを撃退しようとする者で行動が分かれた。

 

 しかし、撃退することが叶う前にフェランドの詠唱が終わる。中位程度の魔法は詠唱破棄して使用することが出来るフェランドが放つ魔法。それがどれほどの威力であるか、予想も出来ない。

 

 腕を天に差し向け呪文が唱えられれば、上空から幾重も重なりまるで踊る龍のような雷霆が降り注ぐ。

 

 次の瞬間、待機会場には光に遅れた轟音がスピーカーと実際の音の二重音声で訪れ、さらに振動が机や機材を振るわせた。待機会場ですらどれほどの威力か判断出来る中、境のスペースにはメーベル、トミー、アドルフ、諸葛亮、陽菜乃、趙雲、ダニエル、リリト、ユーニス、悠一が戻ってくる。全員が直撃を受けた者だと理解出来たのは本人たちだけだ。

 

 一気に10人が減ったことにメインステージの残った者たちは気付いていない。全員が、残った攻撃を耐えることしか今は考えられなかったのだ。

 

 1回目の攻撃は、それぞれアイテムを使ったり防御力を極限まで上げることで耐えた者たちは、逃れる意識を無くしているため再びフェランドとネブリナに攻撃を仕掛けていく。しかし次の詠唱は先よりも短く、僅かな間で次の魔法が放たれた。

 

 次なる魔法は地面が隆起し、鋭い鋭角を持った、まるで串の山のような岩が広く出現する。各軍がアイテムで対応する中、これに自力で対応したのはトーキだ。相棒を呼び出すと「大地の狼」の力を使って魔法を相殺し、同軍の全員と偶然近くにいたアデラとリーゼロッテ、アズハ、ティナを隆起から守る。

 

 しかし、アイテムの範囲にいなかったため秋菊、ダンカン、セルヴァ、ラムダが退場してしまった。

 

 老練なる騎士たちまで退場する中、最後の魔法の詠唱が始まる。それを見上げて、続いて和俊は周囲を見回した。

 

 レギナルト軍の残りはレギナルト、和俊、ティナ、ライナス、ヴィンセントの5人だ。だが、和俊の手元にある防御のアイテムはあと1つで、しかも、制限は3人だ。レギナルトは確実に庇うとして、残り2人は――。

 

 考えている間に、最後の魔法の準備が済んでしまったらしい。フェランドの前に現れたのは空を覆うような大きな魔法陣。青色のそれがどの系統の魔法か、偏見で判断した和俊はすぐにアイテムを取り出した。

 

 そして次の瞬間、メインステージには水の激流が踊る。







                             



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