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「――以上、中継でしたー!」
 弾む声でスマホを卯月がスマホを下ろすと、真正面でその画面をのぞき込んでいたエイミーが顔を覆って膝から崩れ落ちる。
「みったーん!?」
「エイミーさん!?」
「エイミーさん服汚れる!」
「いやハーティさんそっちじゃないよね!?」
 マリアンヌをはじめとした周囲の女性陣が慌てて彼女を囲んだ。その中央で座り込むエイミーはぷるぷると小刻みに震え、見る見るうちに耳まで赤くなっていく。耳をそばだてれば、褒めてもらえた、可愛いって、笑顔可愛かった、と呟く声が聞こえてきた。
「うんうん、みったん良かったねー」
 しゃがみこんだマリアンヌは喜びに打ち震えるエイミーを抱きしめて頭を撫でる。嬉しそうな友人に自分まで嬉しくなっているのか、その顔には緩んだ笑顔が浮かんでいた。
「イチー、卯月っちゃーん、中継どうだったよ?」
「上手くいったー?」
「あ、成功した感じ?」
 突然のエイミーの奇行を心配している人ごみから咲也たちが姿を見せる。どうだった、と訊きつつも、エイミーの状況を見て成功したことを自ずから判断した。
「うん、協力してくれてありがとうね3人とも」
 卯月が親指を立てながら笑顔を見せると、少年3人も親指を立て返す。
 それは遡ること数分前。客人の女性たちが着替えをした、という話をしたところ、「見てみたい」という話になり、卯月たちは彼らの元に向かった。そこで聞こえてきたのが、ルイスの褒める褒めないの話。ああも頑なな状態だと「褒める」という結論には至らないだろう。そう判断した少年少女は、現代の文明の利器・スマホを使い中継をすることを思いついた。成功するかどうかは分からなかったが、文明レベルの違いと「一度顔を合わせている」ことの気安さがあるなら望みはあるはず、という希望に賭けてみたのだ。
 その結果が今。協力者の少年少女はうまくいったことに満足そうに笑い合う。
「あれ? 悠一君は?」
 もうひとりの協力者である悠一の姿が見えないことに気付き、陽菜乃がきょろきょろとあたりを見回した。その言葉に、他の面々の周囲を見渡す。
「ルイスさんの所にいた時はいたんだけど……もしかしてルイスさんに同情してネタバレしちゃってたり?」
 ありえそう、と疑った表情で和俊が呟く言下。
「してねぇよ。お前らが散々言うなってうるせーから」
 不本意そうに心外そうに、少年たちの背後から現れた悠一は眉を寄せていた。最初に会った際の激怒もあって、「ちょっと怖い」と不慣れなリーナは軽く体を強張らせるが、慣れている和俊はぺろりと舌を出す。
「いっがーい、悠一君お優しいから言っちゃうかと思ったなー?」
 謝るどころか笑いながら煽る和俊をじろりと睨んでから、悠一は用事は済んだと言わんばかりに身を翻した。
「お? 悠どこ行くの?」
「飯。お前らはそいつらと話してろよ」
 聖の問いかけに振り返らずに答えて、悠一はすたすたと人ごみに消えていく。
「あ、悠一君」
 駆け出しかけた陽菜乃が気付いたように面々を見渡した。
「いいよイチ、行って来い行って来い」
「陽菜あたしみんなと一緒にいるから、東原君落ち着いたら一緒に戻ってきて」
 軽く手を振られ、陽菜乃は頷き、客人たちにぺこりと頭を下げてから悠一が消えた方へと小走りに駆けだす。その背中が見えなくなってから、エイミーを抱きしめたままのマリアンヌが近くのハーティを見上げた。
「あの子が陽菜乃ちゃんの好きな人?」
「あ、はい。ちなみに悠一さんも陽菜乃さんのこと好きみたいなので両片思いだそうです」
 住人の秘密を隠すどころかぺらぺらと話すハーティに住民たちは「躊躇ねー」「ハーティさん怖っ」などと笑い出す。応じてマリアンヌやリーナも笑うが、少し正気に戻ってきたエイミーは「笑いごとなのそれ」と冷や汗をかくのだった。

 それからしばらくして、咲也たちは食事に消え、エイミーの完全復活を機に客人たちも食事に向かう。
 様々な料理がふるまわれ、多くの出し物が披露され、時々喧嘩をこなしながら、客人たちを歓迎したパーティは賑やかに過ぎていくのだった。