第9話 「内憂外患」 4
時間は放たれた矢の如く過ぎ去る。
ハート隊団舎以北に集結したトランプ騎士団全隊は皆一様に緊張の面持ちで出発の時を待っていた。ややあって、搬送されたばかりの武器が全団員に配られたとの報告が団の最前列にいるティナにもたらされる。ティナは馬の上に立ち上がり、狼籐を高々と掲げた。見渡せば向かって左にダイヤ隊、右に回復しきっていないQを除いたクラブ隊、後方にハート隊、更に後方にジョーカー隊が配置され、その全てがティナに視線を注いでいる。ティナは就任式以来の大舞台に緊張しながら大声を張り上げた。
「これより北の森へ魔者討伐に向かう。目的は魔者の掃討。そして何より、今朝方北の森へ出発した森林調査団とその護衛たちの救出である」
静寂の中で響く自分の声に、ティナはようやくアズハの不安を理解した。彼の配下たちは現在一番危険な場所と判断される場所にいる。ティナだって、きっと配下たちや仲間達がそんなことになっていたら不安で苛立っていたことだろう。現に、ティナの中の"彼女"は幼馴染の危機に恐慌していた。それを必死に押しとどめながら、ティナは深く息を吸い込み、高らかに告げる。
「奮起せよっ、誇り高き騎士たちよっ!! 我らの力で、かの魔者どもを打ち滅ぼすのだっ!!」
告げた直後に沸きあがる喚声。高々と空に向かって突き出された拳と押し寄せてくる熱気に、ティナは再び息を深く吸い込んだ。
「トランプ騎士団っ、出陣!!」