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第11話 「決戦! エルマVSブール」 3
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 エルマの危機的状況には全く似つかわしくない余裕に満ちた声。その主は馬を疾駆させ炎の壁を突き抜けて現れた。降りかかってくる火の粉は彼が振るった大薙刀に払われる。エルマは焦点の定まらぬ視界にいつも自分の前に立ちふさがる男の姿を移した。

「なん、で……来や……った」

 何で来やがった。そんな強気な発言とは反対(うらはら)にエルマは安堵する。これで助かる、と。しかしクレイドからよこされたのは助けの手ではなく、厳しい叱咤だった。目の前に薙刀の柄が打ちつけられる。

「おぅエルマ、よく聞け。オメーやティナたちが持つ武器は条件を満たすと形を変える。そいつが一番使いやすい武器の形にだ」

 躊躇も出し惜しみもせずにあっさりと告げてくるクレイドにエルマは力なく目を瞬かせる。何を言っているのかと、その目が問うているが、クレイドはそちらを見ず真っ直ぐにブールを見ていた。過去一度その手で斬った魔者は、あの頃では考えられない力を手に再びその前に立ちふさがるらしい。

 しかしあの時と違い戦うのは自分ではない。

「そのために武器たちは伝心によるコトバを持つ。心を通わせることでそいつに一番いい武器をあてがうためだ。隊長はいつでもそのコトバに耳を傾けてなくちゃいけねぇ。――なのに何だっ!?」

 ドンッ、とクレイドは地面に武器を再度打ちつける。

「テメェは烏葉のコトバを聴こうともしねぇっ。どころか無関係を気取って周りの奴らに自分から近付こうともしてねぇじゃねぇか!! そんなんだからいつまで経っても烏葉は俺の手から離れねぇんだろうがっ!!」

 こんな時だ。精一杯励まし勇気付けてやる気を出させてやる手段てもあっただろう。だがそれが自分の性に合わないことをクレイドはよく理解していた。だからやらない。それに、理屈なしに腹が立っているのもある。もしこの言葉で全てを捨てるなら、彼はもう要らない。それはもう、誇り高い騎士でもそれを束ねるクラブでもないから。

「戦えねぇ臆病者はそのままおねんねしてな。烏葉は俺が持つ。クラブとして、俺が戦う」

 しゃがみ込み、クレイドは力をなくしてすでに乗っているだけの状態になっているエルマの手を烏葉から払おうとした。だが、手が触れるか触れないかというぎりぎりの瞬間、その傷だらけの手がまるで反射のように烏葉を握り締める。

 クレイドはそれを見てにっと満足げに笑った。その笑みの先で、先まで光をなくしかけていた瑠璃色の双眸が息を吹き返す。

「〜〜っけんじゃ……ぇ、……は、レ、だ――!!」

 今にも倒れそうな体を烏葉で支えてエルマは苦しげに少しずつ起き上がっていった。クレイドは立ち上がり、その姿を楽しげに見つめて口を開く。その声には後継者の成長を喜んでいることが色濃く浮かんでいた。

「――聞こえねぇよ」

 挑発する言葉に、エルマはカッと目を見開き、血まみれの顔を上向け吼える。





 

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