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第12話 「決戦! アズハVSメーリッド」 1
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 ブールが滅したか、まぁアレは程度が低かったから仕方ないな。

 それまで感じていた仲間の気配が消えたことにメーリッドは冷淡とも取れる考えを抱き瞬時に切り捨てた。同じ場所に集まりはしたがアレにたいした執着を抱いていたわけではない。いなくなるならいなくなればいい。弱いものにいつまでも気を注いでいるつもりはない。それに今彼は、アレとは比べ物にならない面白いものを相手にしているのだ。

 メーリッドは薄笑いを浮かべてアズハを見下ろす。片膝をつき頭を垂れ苦しげに喘ぐ姿の、そのなんと心を騒ぎ立てさせることか。血にまみれながらも自分を見上げる怒りに満ちた双眸はなんとそそられることだろう。嗜虐的な笑みを浮かべるメーリッドの目には、アズハは感度のいいおもちゃとしか映っていなかった。

 はじめて会ったのは確か15年前だったと思う。強くなるのだと躍起になっている彼からメーリッドは生まれた。あの時も美味そうであったが、今は更に熟れてそれが増している。その上、彼はまた何かぐずぐずと悩んでいるらしい。これがまた心地よくメーリッドに流れてきた。先に左手首を切り落とされたがそれはまあいい。氷で傷口を塞いでおけば出血に関しては何とかなるし、そのうち再生もするだろう。

 それにしても、とメーリッドはアズハの右手をじっと見下ろした。満身創痍になりながらも彼はあの武器を手放さない。最初は面白かったがそろそろ興もそがれてきたし、引き剥がしてやろう。

 視線を空に彷徨さまよわせ腕組みをしてその方法を考える。そしてたいした間も空けずにメーリッドはにんまりと笑った。悦に入った双眸が妖しく光る。

【アズハ・ヒルク。いつまで執着するんですか? あなた使えないのでしょう、それ】

 蔑んだ声は落ち着き払っていたが、その目は興奮に血走っている。アズハは自分の足を地面に縛り付ける氷の足枷を壊しながらそれを睨み返した。メーリッドは応えていない様子で長く伸びた爪を振り上げる。

【どうせ使えないのなら諦めなさい。自分で出来ないのなら私がお手伝いして差し上げますから】

 言い終わるより早くメーリッドは爪を振り下ろす。あわや鋭い先端がアズハの腕を切り落とさんとしたその時、一瞬早く2人の間に硬質な何かが割り込んだ。それはメーリッドの爪を弾くとそれをさかのぼってその主を切り裂こうとする。メーリッドは乱入者の姿にさっと青くなって飛びのいた。

 空虚を斬ったのは子供の背丈ほどの大剣。並々ならぬ膂力を必要とする重量のあるそれを軽々と振るったのは、追いついてきた先代ハート。ラムダは攻撃を避けられても氷に足止めされているアズハを見ても表情を変えない。何も言わずに大剣を振るってアズハの足元の氷を砕いた。

 簡単にやってのけているが、大剣を扱うには膂力のみならず技術も必要とする。50代の男がすることかと、彼の突然の登場よりも魔者と現ハートはそちらの方に言葉を失ってしまった。特にメーリッドはこの世に生じた時にアズハを襲って彼に斬られて滅した過去がある。幾ら力が付いたと言っても考え無しに近づくのはやはり恐ろしい。ラムダの力は本物だとこの魔者は知っているのだ。



 

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