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第12話 「決戦! アズハVSメーリッド」 4
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 しばらく感慨にふけっていると、場違いに明るい声が呼びかけてくる。

「アーズハー、無事かぁ?」

「追いついたのかエル――お前が無事か?」

 明るい表情や言動とは裏腹に血まみれの傷だらけでその上右腕が焼けただれている少年にアズハは驚きを込めて問い返す。もしや痛みがひどすぎて感覚が麻痺してしまったのかと危ぶんでいる視線を受けながらも、エルマは自分の右腕などを見てからやけに機嫌よく笑った。

「イテーけど平気なんだよ。こいつのおかげでさ。ホラホラ、見ろよアズハ!」

 言いながら左腕を差し出してくる。出発前まで確かになかったクローが装着されているのを見てアズハは目を見開いた。

「烏葉か!? 変化できたのか」

「おうっ! オレな、こいつで炎吐くデブ魔者倒したんだぜっ!!」

「わ、分かった分かった。分かったから暴れるな」

 両腕を振り回すエルマをアズハは慌ててとどめる。怪我をしているので手を出すわけにも行かないで戸惑っている彼ははたから見ると滑稽だった。

「はしゃぐなボーヤ」

 鈍い音を立ててエルマの後頭部に拳が叩きつけられる。怪我人相手だというのに遠慮容赦ないクレイドにアズハは声を失った。

「甘やかしてんじゃねーぞアズハ。状況見ずにはしゃがせんな」

「……その台詞は後継者の身体状況をよく見てから発言すべきだと思うのですが……」

 真面目ぶってるが明らかに取る行動を間違っているクレイドにアズハは珍しく「はい」以外の言葉を返す。クレイドは2、3度目をぱちくりさせてから、快活な笑みを浮かべた。

「おーおー。武器変化させたら強気だねーこっちの坊主も。……ま、いいことだがな」

 満足げなクレイドの笑顔に、アズハもまた笑い返す。同じ2人なのに、先日彼のところへ「ティナのせいで」などと馬鹿なことを言いに行った時とはまるで違う空気が流れる。

「〜〜っておい! 俺のこと無視してんじゃねーよおっさん!」

「……クレイド、早く代われ」

「お、悪ぃなラムダ」

 不機嫌な怒鳴り声を上げたのはエルマだった。殴られたら即行仕返しに来る彼にしては遅い行動だと思ったら、ラムダに片腕で首元を押さえつけられているかららしい。成長途中のエルマにラムダは振りほどけないだろう。アズハでさえ無理だ。

 ラムダに押さえられながら怪我人らしからぬ大声で先代に貧相な語彙力を露見させる文句を言い募るエルマ。その幼さに「これでクラブか」とこめかみをもんでから、アズハは衛生兵を呼び彼の治療に当たらせる。そんなことより進軍しようと駄々をこねる彼を黙らせるのは一言で済んだ。

「まだ先に魔者が山のようにいるはずだ。治療は受けられる時に受けておけ」

 すぐに出発することになるぞ。告げようとしたその時、先へ進む道を塞いでいた魔者たちがまるで連鎖するように一気に倒れていった。もんどりうつモノもいればすでに絶命しているモノもいる。何が起こったのかと緊張が走る中に顔を見せた人物に、新旧ハート・クラブの4人はほっと表情を緩めた。




 

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