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 その日、風吹く宮の管理人は自身の執務机の上に文字通り山のように積み上げられている手紙を見て怪訝な顔をしていた。

「何ぞこれ?」

 独り言のように口にすれば、カレンダーの前でペンを握っていた管理代行人の青年・謝が「ああ」と主に顔を向ける。

「陳情書ですよ。マスター宛てです」

「そりゃ宮関連だったら私宛てだろうよ――ああ、宮のことじゃなくて本当に私に向けてってことか」

 山の一番上にあった一枚を取って目を通した管理人は納得したように呟いた。すでに一度目を通しているらしい謝はまたカレンダーに目を向けて会話を続けた。

「3年前のハロウィン杯、一昨年の運動会、去年のバトルロイヤル。体を動かしたりあるいは危険度が高かったりした行事が続きましたからね、企画するならもっと大人しいものにしてくれという意見が相次いでいますよ」

「みたいだなぁ」

 どこか他人事のように答えながら、管理人は積み上げられている手紙を次から次に読み進めていく。速読なんて技術は取得していないが、どれもこれも「今年はバトル物なし!」「もうちょっと一般人のこと考えて」などなど一言で済んでしまっているのですぐに読み終わってしまう。

 しばらくして全ての手紙を読み終えた管理人は軽く首を回して椅子の背もたれに寄りかかった。黙って天井を眺める姿を横目で捉え、何かしら考えているのだろうと判断した謝も同じく黙ってその口が開くのを待つ。

 すると、不意に管理人は体を前に戻し、笑った。

「大人しけりゃいいんだよな、大人しけりゃ」

 言下手元にメモ帳を引っ張り、管理人はさかさかとそこに文字を連ねていく。その動作が始まると同時に主に近づいていた謝は、書き終わると同時に渡されたそれを戸惑うことなく受け取った。そうして指示書に目を通すと、若干呆れた双眸を管理人に向ける。

「……大人しくはありますし、まぁ問題ないでしょう」

「ないでしょう。ってことでよろしくね〜」

 手をひらひらさせてまた笑った主に、謝は丁寧に頭を下げ了承を示した。



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