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 ダニエル(『クラウンワルツ』)

 ジェイムズ(『クラウンワルツ』)

 

「ぼぼぼ、僕とダニエル様の衣装交換? と、とんでもないです! 主様と衣装交換だなんてそんな恐れ多いこと――!」

 幼い頃からダニエル付きの従者であるジェイムズは傍から見ていると面白いくらい動揺して恐縮による拒否を表している。ならば交換するか、と謝が問おうとすると、それに先んじてダニエルが彼の頭を押さえつけた。

「ひらひらしたスカートと交換するよりよっぽどましだ。主だ何だはいいから黙って交換しろ」

 折角ダメージの少ない相手に当たれたのに逃すつもりのないダニエルが自然と命じると、ジェイムズも聞かないわけには行かず反射のように是を唱える。主だ何だはいいからと言いつつ、とステージ下ではラルムたちが茶々を入れていた。

 交換に納得したと判断し、謝は交換の指示を出す。


ダニエルとジェイムズ

「あああああ、申し訳ございませんダニエル様に僕の服など……」

「気にするなと言っているだろう。第一、そんな質の悪い服を与えているつもりはないぞ」

 謝り続けるジェイムズに呆れたような視線を向け、ダニエルが切り返すと、ジェイムズは慌てて肯定する。

「もちろんです! ダニエル様のご厚意で質の良い生地で作っていただいております」

「だったらもう謝るな。あとその服を着ているならしゃんとしろ。地方とはいえ騎士の制服だぞ」

 丸まってしまっている背中を叩くと、ジェイムズは「は、はい!」と返事をしてわざとらしいほど胸を張って見せた。少しばかりおかしいが、言いつけ通り背筋を伸ばし謝ることをやめた従者にダニエルは軽く笑う。

 そんな様子をステージ下で見ていたラルム・ライナス・リリトのよく喧嘩している3人は顔を寄せ合ってこそこそと喋りだした。「本当にトウェイン兄妹と喋っている時のダニエルは別人のようで気持ち悪い」、と。

「ほ、本当はお優しい方なんですよ〜。ただちょっと、意地っ張りな所があるだけでして……」

 近くにいたため聞こえていたトウェイン兄妹双子の妹・メーベルは苦笑しながらも主のフォローを入れる。しかし、笑顔のダニエルに違和感しかないラルムたちは彼女のフォローに苦笑を返すしかなかった。



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