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『今年の宮内企画は戦闘関連以外の催しとする』

 管理人からそのような通達が出されてから3日後、風吹く宮の住人たちは改造され面積が拡張された第2館のパーティールームに集められていた。純粋に楽しみにして来た者、疑いつつ来た者、何も考えずに来た者、他の者に連れて来られた者、集まり方は様々であったが、彼らを平等に迎えたのは立食形式で取り揃えられた料理や飲み物と、すでにスタンバイしていたスタッフたちだった。

 そこまで来てようやく本当に騒々しい催しではないことを納得すると、騒ぎ好きの住民たちはすぐにパーティーを楽しみだし、開始から1時間が経つ頃には室内には賑やかな談笑の声が響きだす。

 それを見計らって動き出したのはマイクを持った謝とその後に続く好だった。彼らがパーティールーム前方のステージに立つと、気付いた面々の視線がそちらに集まる。

『皆様パーティーはお楽しみいただいておりますでしょうか? ただいまより、今年のメイン企画を発表させていただきます。どうぞこちらにご注目ください』

 謝が少し立ち位置を変えると、その背後のモニターに文字が映し出された。その内容に、住民たちは楽しそうな顔をしたり怪訝な顔をしたりといつも通り様々な反応を示す。

 

『風吹く宮 住民衣装交換2013』

 

 それが、今年度の風吹く宮の宮内企画の名称である。面々がそれを認識したと判断すると、謝は再びマイクを口に近づけた。

『今回の企画は読んで字の如く、皆様の衣装を交換する、というものになります。流れとしましては、まずこちらのモニターにランダムで2名のお名前が表示されます』

 説明と同期し、モニターに2つの枠が表示され、そこに名前が次々に表示されていく。そしてシャッフルは、謝と好の名前を出した所で止まった。

『表示されますと同時にそれぞれの衣装が呼び出され、サイズに合わせた物を自動着せ換えいたします』

 さらに説明が続くと、コルクを抜いたような音と共に白い煙が発生し、それが晴れた後の光景に一同に衝撃が走る。ステージにいる風兄妹。その衣装がお互いに入れ替わっているのだ。にこにことしている好が着ているのは謝の衣装、いつも通りの表情の謝が着ているのは……白いスカートが愛らしい好の衣装だった。様々な表情が入り混じる中、謝が再び喋りだす。


謝と好

『衣装については当家に初期登録されているものが対象となり、また、サイズに関しても全てデータベースより作成されておりますので全サイズ揃っております。衣装の切り替えは自動で行われますので申し訳ございませんが拒否は――』

「いやいやいやいや!?」

「待って謝さんそんな普通に続けないで!」

「いいの? いいの謝さんそれで!? もっと仕事選ぼうよ」

「そうだよ! あ、でも似合ってる」

「そりゃ兄妹だし衣装パターンも似てるから――っていうか、え? つまりこれフェリシーちゃんとかのふりふりした服をラムダさんとかダンカンさんとかのごついおっさんたちが着る可能性もあるわけ!?」

「う、うわあぁぁ……地獄絵図……」

「チャ、チャーリーさんいいんですかあれ?」

 平然と進行しようとする謝に沈黙してしまっていた住民たちが次々に騒ぎ出す。あまりの衝撃に卯月がすぐ近くにいたチャーリーに問いかけると、チャーリーは難しい顔をしたまま重々しく答えを返した。

「…………仕事だから、と自分を説得しているところだ」

 深刻そうに、しかし止めるつもりは全くない様子のチャーリーを見て、流石はワーカーホリック一家ミルトン家と何人かは内心で感心する。

『――説明を続けさせていただきます。拒否の方は申し訳ございませんが不可能となっておりますが、誰かと交換する、というのは可となっております。では、早速第一弾に参りましょう』

 謝がステージ脇に合図を送ると、応じてシャッフルが始まった。やけに鬼進行なのは本当はこの企画に不満があるのではないかと邪推する者は少なくない。

 そんな推測が飛び交う中、最初の一組が決定した。



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