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 消防士、宇宙飛行士、近所のおばさんがやってる花屋、じいちゃんの友達のじいちゃんの店、学校の先生、冒険家、父さんの知り合いみたいな農家さん、etc、etc。

 子供の頃、俺は何にでもなれると思っていた――。

 

 

 

 篠月 若太(しのづき わかた)はどこにでもいる普通の高校生であった。規律の緩い学校であったために、毎日を楽しく笑いながら過ごし、授業中に寝ては怒られ罰をこなすのもすっかり慣れていた。

「お前も結構阿呆だよなー」

 友人の西本 青雲(にしもと せいうん)からもよくそう言われた。変人で有名な彼だが、1年の頃――もっと前――から「教師になる」という目標を持っているため、大学に進学するつもりはなかった若太とは授業態度は天地の差であった。

「いーのいーの、就職はちゃーんとするから〜」

 気楽な発言だったが、あてがないわけではなかった。青雲の影響ですっかりパソコン関連に強くなった若太は高校を卒業したらその関連の専門学校に行くつもりでいた。就職に強いことで有名な学校であったし、眠り癖はあるがそれを直せば自分もその道を辿れると若太自身も理屈なく信じていたのだ。

 

 予定通り専門学校に入った若太はその人柄も助けすぐに友人が出来た。卒業する頃には150人ほどの学年の大半が男女問わず「友人」と呼んでくれるまでになった。

 その中彼が最も仲良くなったのは鏑木 隆臣(かぶらぎ たかおみ)という、若太とは真逆の性格の男だった。愛想は悪く態度もきつめ。真逆であったが、だからこそピースがはまるように仲良くなったのかもしれない。

 隆臣は若太と同じように企業にプログラマーとして就職することを望んでいたが、彼は若太よりも意欲的であり、技術力もあった。

「隆臣ちゃんほどじゃなくても頑張らないとね〜」

 出来のいい友人を妬むでもなくやる気を失わなかった若太は、高校時代の眠り癖を封印して真面目に授業に取り組んでいた。

 

 そんな彼に不幸が訪れたのは、卒業を控え、最後の大規模開発を行っている時だった。

 



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